放射線の計測と単位
東北関東大震災により,甚大な被害を受けられた全ての皆様に,心よりお見舞い申し上げます。
また被災地において,懸命に救援活動にあたっておられる関係の皆様に感謝と敬意を表します。


放射能の量
同じベクレル数の放射能が存在しても、それから受ける放射線の強さは条件によって異なる。
すなわち、放射性物質の種類や測定点までの距離、間にある遮蔽物の効果などである。

吸収線量
そのために、吸収線量の単位としてグレイ(Gy)が用いられる。
これは、物質1kgあたり1Jの吸収があったということであり、1 Gy=1J/kgとなる。

線量当量
吸収線量が同じ場合でも、生体に与える影響は放射線の種類により変わる。
そこで、吸収線量に線質係数を掛けた線量当量という量を使う。単位はシーベルト(Sv:J/kg)であるが、線質係数を掛けるため、Gyとは別ものである。


線質係数は、α線:20  中性子線:10  X線・β線・γ線:1で、単位を持たない量(無次元)である。
このように、放射能量を表すベクレルの値の大小は人体への影響度シーベルトとは別の単位である。


仮にベクレルとシーベルトの関係をお金に例えると、硬貨の枚数=ベクレル、合計金額=シーベルトと考えることもできる。
    Aの財布には10円2枚と500円玉1枚であわせて硬貨3枚(3ベクレル)、
    Bの財布には5円玉4枚と100円玉5枚で硬貨9枚(9ベクレル)
    合計金額は同じ520円(520シーベルト)。
    硬貨の金種(放射線の種類)によって合計金額は変わる。

A 放射線の単位
放射能
放射能の量
放射能(Radioactivity)とは
物理学的な定義では、放射線を出す活性力(放射性,放射活性、放射線を放射する程度)を言う。
放射能の強さは、1秒間に崩壊する原子核の数で表され、ベクレル(Bq)という単位で表す。


放射能の単位
Bq(ベクレル)
放射性物質が1秒間に放射線を出す量。

毎秒ごとに原子核が自然崩壊する確率は、放射性核種の半減期に反比例するため、ベクレルはその核種の半減期存在量とで一意に決まる。
例えば、ラジウム226の半減期は1600年であり、1秒間に直せば原子核1個あたり約1.37×10-11個の原子核が崩壊することに相当する。
1gのラジウム226には、約2.66×1021個の原子核があるので、計算すると1秒間に約3.64×1010個が崩壊することになる。
したがって、1gのラジウム226の放射能の量は約3.64×1010ベクレルであるといえる。
この場合のラジウム226は時間と共に崩壊によって減少していくので、計算するにあたっては経過時間を考慮する必要がある。

Ci(キュリー)
かつては、1グラムのラジウムが持つ放射能を単位とし、これを1キュリー(記号Ci)としていた。
1グラムのラジウムは毎秒 3.7×1010個のα線を放射しているので、1キュリー=3.7×1010(370億)ベクレルということになる。
    1Ci=3.7×1010Bq=37GBq

BqとSv(経口または吸入した場合の預託実効線量)
  Cs137 経口摂取  1.3×10-8Sv/Bq=0..013μSv/Bq    吸入摂取 3.9×10-8Sv/Bq=0..039μSv/Bq

照射線量
照射線量とは
X線またはγ線の強度を表す物理量である。
照射された単位量の空気から放出される電子が空気中で完全に静止するまでに電離するイオンの電荷で表される。
なお、陽イオンまたは陰イオンの片方のみの電荷で計算する。
「単位量」の空気としては、単位質量と単位体積が考えられ、厳密には異なる物理量だが、区別せず「照射線量」と呼ぶ。
ただし、国際単位系 (SI) および日本工業規格 (JIS) では、単位質量あたりと定められている。
放射能の中で、X線とγ線についてのみ定義される。


照射線量の単位
Gy(グレイ)
1グレイは物質1kgあたりに1ジュール(エネルギー量を表す単位)のエネルギーを受けたということを意味する。
1ジュールは標準大気圧(1気圧)で20℃の水1グラムを約0.24℃上昇させるエネルギーに相当する。
        1Gy=1J/Kg    1J=0.24cal   
ガン治療に電離放射線を用いるさい、医師は通常放射線治療をGy単位で処方する。
Gyを使う以前はR(レントゲン)という単位が用いられた。

R(レントゲン)
照射した放射線の総量(照射線量)を表す古い形式の単位である。
空気中にX線ないしはγ線を照射すると原子がイオン化される。
イオン電荷の総量を計測し、電荷の計測区画に含まれる空気の質量で割った値である。
1レントゲンは0℃、1気圧の空気中で、2.58×10-4クーロン/kgの電離を発生させる照射線量。
この単位は国際単位系(SI)に採用されず、日本国では1989年(平成元年)4月の国際単位系への切り替え以降使われなくなった。


吸収線量
吸収線量とは
放射線が物質を通過するとき、常に放射線の持つエネルギーのすべてが物質に与えられるわけではなく、エネルギーの一部が物質に吸収される。
エネルギーの与え方は、放射線の種類により異なる。
吸収線量とは、単位質量(kg)の物質に吸収された放射線のエネルギー(J)を表す量で、単位はJ/kg。
一般的な単位としてグレイ(Gy)が用いられ、1Gy=1J/kgとなる。

吸収線量自体が生物学的効果を計る目安に直結しないことには注意を要する。
たとえば1Gyの光子線吸収と比較すると、1Gyのアルファ線吸収は生物に多大な悪影響を与える。
そこであるレベルの影響を生物に与える等価線量の算定には、生物学的効果の差を反映する適切な因子(放射線荷重係数)を乗じる必要がある。

放射線被曝による確率的影響のリスクは、実効線量により数値化される。
これは臓器・組織ごとに異なる放射線感受性を考慮した係数(組織荷重係数)により等価線量を加重平均したものである。
電離放射線のリスクを議論する際には、その生物学的効果を考慮する因子を乗じた線量当量(Sv)を用いる。


吸収線量の単位
Gy(グレイ)
放射線によって1キログラムの物質に1ジュールの放射エネルギーが吸収されたときの吸収線量を1グレイと定義する。
1グレイは物質1kgあたりに1ジュール(エネルギー量を表す単位)のエネルギーを受けたということを意味する。
1ジュールは標準大気圧(1気圧)で20℃の水1グラムを約0.24℃上昇させるエネルギーに相当する。
        1Gy=1J/Kg    1J=0.24cal  

Rad(ラド)
ラドは、吸収した放射線の総量(吸収線量)を表す古い形式の単位である。
単位当りの物質が放射線を吸収し発生したエネルギー(温度上昇)で計測する。
1ラドは0.01J/kgに相当し、国際単位系では吸収線量はグレイ (Gy) で表す。
        1Gy = 100radに相当する。


等価線量(線量等量)
線量等量とは
線量等量
ある物質が放射線に照射されたとき、その物質の吸収線量を示す単位がグレイ ( Gy=J/kg) である。
生体 (人体) が受けた放射線の影響は、受けた放射線の種類 (アルファ線、ガンマ線など) によって異なるため、吸収線量値 (グレイ) に放射線の種類ごとに定められた放射線荷重係数を乗じて線量当量 (シーベルト) を算出する。
         Sv = 放射線荷重係数 × Gy

放射線荷重係数(WR
放射線種によって値が異なる。
     
放射線 WR
アルファ線 20
X線・ガンマ線・ベータ線
陽子線
中性子線 5-20

 

線量等量の単位
Sv(シーベルト)
人体が吸収した放射線の影響度を数値化した単位である
生体への被曝の大きさの単位。
       Sv = 放射線荷重係数 × Gy

Sv/h(毎時シーベル)ト
毎時シーベルトは、1時間あたりの生体への被曝の大きさの単位。シーベルト毎時ともいう。
シーベルトが被曝の総量を表すのに対し、毎時シーベルトは、被曝の強さを表す。
1毎時シーベルトは、1時間で1シーベルトの被曝量を受けることに相当する強さ。

rem(レム)SI単位系に切り換わる以前はレム (rem) が使われており、次のとおりに換算できる。
       1 Sv = 100 rem = 100,000 mrem (ミリレム)



実効線量
実効線量とは
実効線量
放射線の種類と性質、人体の組織や臓器の種類によって、人体が放射線を受けたときの影響は異なる。
これらを考慮して算出する放射線量を実効線量という。
実効線量は、放射線の被ばく管理に用いられる。
         Sv=Gy(吸収線量)×放射線荷重係数×組織荷重係数

組織荷重係数
身体の組織や臓器により異なる放射線の影響度(放射線感受性)の指標となる。

組織・臓器 組織荷重係数
生殖腺 0.20
赤色骨髄、結腸、肺、胃 0.12
乳房、肝臓、食道、甲状腺、膀胱 0.05
皮膚、骨表面 0.01
その他の組織 0.05

法令で定められた実効線量限度
放射線業務従事者の線量限度は、放射線障害防止法・医療法施行規則等により,次のとおり定められている。
なお、この線量限度には自然放射線による被ばくと医療行為による被ばくは含まれていない。

実効線量限度 100mSv/5年
50mSv/年
③女子については 5mSv/3月
④妊娠中である女子 1mSv
(管理者が妊娠と知ったときから出産までの間につき)
等価線量限度 ①目の水晶体   150mSv/1年
②皮膚             500mSv/1年
③妊娠中である女子の腹部表面   2mSv(上記④の期間中)
緊急作業に係る
   線量限度
放射線業務従事者(女子* を除く)の線量限度は実効線量について100mSv、目の水晶体の等価線量について300mSv及び皮膚の等価線量について1Svとする。
(女子*妊娠不能と診断された者及び妊娠の意思のない旨を使用者等に書面で申し出た者を除く。)



空間線量 
  空間線量とは
空間線量
一定時間(通常1時間あたり)内の空間のガンマ線量をいう。
これらは、サーベイメータ、連続モニタ、可搬式モニタリングポスト等により測定される。

モニタリングポスト

大気中の放射線の量(空間放射線量)のうち、γ(ガンマ)線を連続して測定する据え置き型の装置。
戸外に置く検出器と室内に置く測定器からなっている。
放射線が検出器に当たると、検出器内でかすかな光を発する仕組みになっており、その光を検出・増幅して測定器で放射線量として計測する。
東京都健康安全研究センターでは、ヨウ化ナトリウム タリウム(NaI(TI))シンチレータを検出器に用いたモニタリングポストを、周辺環境からの影響が少ない庁舎の屋上(地上約18m、床面より180cmの高さ)に設置して、1年を通して24時間連続で自動測定してる。
モニタリングポストでは、極めて低い放射線量まで精密に測定することができる。
放射線の発生する施設の場所や平常時や緊急時の一般環境での放射線モニタリングに使用される。

サーベイメーター
携帯用の放射線測定器で、アルファ線、ベータ線、ガンマ線及び中性子線用のサーベイメーターがある。
検出器の種類には電離箱式、GM管式、シンチレーション式などがある。
測定内容として、空間放射線量率測定(ガンマ線)や、放射能表面汚染測定(ベータ線)の検査などに用いられる。
原子力発電所の核燃料などの中性子線測定には、BFガス、またはHe-3ガスを充填した比例計数管式が用いられ、速中性子の測定にはこの比例計数管を中性子減速材(パラフィン、プラスチックなど)で覆い、速中性子を熱中性子化して測定する。

各地の空間線量
  島根県 環境放射線データ 

  千葉県環境放射線データ

  長野県環境放射線データ



放射線検出器
放射線検出器の特徴
放射線の検出方法と検出器

放射線の検出方法と検出器
検出方法 検出器名 主な測定対象放射線
電離作用を利用するもの 気体 電離箱 β線、α線+γ線
GM計数管 β線、γ線
比例計数管 中性子線
ガスフロー型計数管 α線、β線
固体 半導体検出器 α線、γ(X)線
励起作用(蛍光)を利用するもの NaI(Tl)シンチレーション検出器 γ線
ZnS(Ag)シンチレーション検出器 α線
プラスチックシンチレーション検出器 β線
熱蛍光線量計(TLD) γ(X)線
蛍光ガラス線量計 γ(X)線、β線、中性子線
写真作用を利用するもの フィルムバッジ γ(X)線、β線、中性子線


放射線検出器の適用分類

用  途 適応機種 測定線種 検出器
電離作用 発光作用 その他




3





3He

















Na





|











|

Zn
S




|



















敷地内外
固定式
環境
モニタ
γ線                
建屋内
固定式
エリア
モニタ
γ線
中性子線
       
携帯式 サーベイ
メータ
γ線            
携帯式 レム
カウンタ
中性子線                  



携帯式 サーベイ
メータ
α線
β線
           
人体表面 体表面
モニタ
ハンド
フット
モニタ
β(γ)
                 
人体内部 ホール
ボディー
カウンタ
γ線              
物品表面 物品搬出
モニタ
β(γ)
                 





個人装着 個人線
量計
γ、β線
中性子線
             
個人装着 電子式
線量計
γ、β線
中性子線
                 






施設排水 水モニタ γ線
β線
               
施設排気 ガス
モニタ
γ線
β線
               
施設内
空気
ダスト
モニタ
ヨウ素
モニタ
α,β線
β線
         






鉄板等
厚さ測定
厚板用
厚さ計
γ線                

フィルム

厚さ測定
薄板用
厚さ計
γ線                  
X線
厚さ計
X線                  
容器内
液体等
レベル
測定
β線
厚さ計
β線                  
レベル計 γ線                  
密度測定 密度計 γ線                  
含水量
測定
水分計 中性子線                  
石油
硫黄分
測定
石油
硫黄計
γ線
X線
                 


各種の放射線検出器
放射線は目には見えず熱くもないので、検知するために特別な測定器具を用いる。
測定したい線種と目的に応じて適切な器具を選ばなければならない。

  個人の被曝線量を知るためには、フィルムバッジやガラス線量計が安価・軽量でよい。
  表面汚染を検出するには、GM・ガイガー=ミュラー計数管などが用いられる。
  空間線量を測定するには、シンチレーション検出器などが用いられる。
  放射線スペクトルの分析には、半導体検出器やシンチレーション検出器が多く用いられる。
 
電離箱
電離箱とは
一定体積内の容器に気体を封入し、放射線による気体の電離作用を利用した放射線検出器。

測定原理
気体(空気、ヘリウム、アルゴン等)内部の2つの電極(一つは容器の壁)に高電圧をかけた状態で電場を作り、ここに放射線が入射するとその電離作用によってイオン化する。このイオンを集電極に集めると電離電流が流れる。
この電流値の変化を測って放射線の強度を測定する装置。

特徴
この原理を利用した放射線測定器には、ポケット線量計、熱中性子測定用のフィッションチエンバー、γ線補償型電離箱等がある。

検出される放射線
アルファ粒子、ベータ粒子、ミュー粒子などの荷電粒子線やX線、ガンマ線。
アルファ粒子はガラスの窓を透過しないが雲母の窓は透過するので、端窓の材質をガラスにすればベータ線のみの測定が、雲母にすればアルファ線とベータ線の合計が測定できる。

補足:煙感知器としての利用
電離箱は煙感知器として利用されている。
電離箱の原理を利用した煙感知器は、イオン式煙感知器と呼ばれている。
電気的に中性の気体分子は1個以上の電子を失い、帯電したイオンになる。
2つの電極には電圧(典型的な煙感知器では数百ボルト)がかけられているので、イオンと電子は電極に引きつけられる。
電極間のイオンのこの小さな移動は測定可能な電流を生み出す。
煙が検知器に入ると、イオンは煙の粒子に衝突し中和されるので、電流が流れなくなる。電流の低下によって警報が発報する。

GM計数管(Geiger-Muller counter)
GM計数管とは
GM計数管は、放射線によって空気やその他の気体の中に生じたイオンをガス増幅して、その放射線の量を測る検出器。
発明から80年近くの時間を経ているが、今日でもこの原理を利用し、放射線を計測している。

測定原理
不活性ガスを封入した筒の中心部に電極を取り付け、高い電圧を掛ける。
筒中に放射線が入ると、不活性ガスが電離されて電極と陽極の間にパルス電流が流れる。

特徴
GM管はガンマ線も検出できるが、感度はよくない。
GM管内のガス密度が低いため、透過力の高いガンマ線は相互作用をしにくいためである。
ガンマ線を測定する目的では、NaIシンチレーション検出器の方が適しているが、逆にシンチレーション検出器は窓が厚くベータ線は透過できないので、ベータ線の検出には適していない。

検出される放射線
β線。γ線。
ほとんどのGM管はガンマ線と2.5MeV以上のベータ線を検出する。
中性子線はガスを電離しないので、GM管は中性子は検出できない。
しかし、管の内側をホウ素でコーティングするか、三フッ化ホウ素もしくはヘリウム-3ガスを充填すれば、中性子線にも反応するGM管を作ることもできる。

比例計数管(proportional counter)
比例計数管とは
電離放射線の数を数え、またそのエネルギーを測る測定装置。

測定原理
気体の電離作用を利用した放射線測定器の一種で、極めて細い線の電極を使い、アルゴンガスを封じ込め、高電圧でガス増幅することによりイオンの量に比例増幅した信号を作り出すことによって、放射線の量を測定する。

特徴
電離箱に比べて1~3桁大きい出力信号が得られる。
GM計数管と比較して分解時間が短い(0.2~0.5μs)ので、高い計数率の測定が可能である。
信号の大きさなどを分析することにより放射線の種類やエネルギーの情報を得ることができる。

検出される放射線
飛ぶ距離の短いアルファ線、ベータ線、低エネルギーのX線などの放射線の測定に適している。

半導体検出器(Semicondoctor detector)
半導体検出器とは
半導体を利用した粒子あるいは放射線検出器である。
主にシリコンまたはゲルマニウムが用いられる
他の検出器 (シンチレーション検出器など) に比べエネルギー分解能にすぐれており、 関連分野の実験や個人の被曝量を測る線量計、ガンマ線スペクトルを解析することによる核種の同定などに用いられる。

測定原理
基本的な動作原理は気体電離箱と同じであり、放射線が半導体検出器を通過するとそれらによって電離した電子が電子-正孔対を作り出し、これを逆バイアス電場によって電極に集める。
こうして集められた電荷をチャージセンシティブアンプ (電荷総量に比例した信号を出力する増幅器) を介して増幅・測定するこにより、空孔内部で失われたエネルギーがわかる。
電子-正孔対を1個作り出すのに必要なエネルギーは、ゲルマニウム半導体検出器で2.96 eV、シリコン半導体検出器で3.64 eVである。
これは電離箱、比例計数管などのガス形式の検出器では約 100 eVに対して1個のイオン対しか発生しないことに比べればいかに極めて高い分解能といえる。

特徴
分解能に非常に優れているため低レベル放射線でも感度よく計測できる。

検出される放射線
Si半導体はバイアス電圧が数10Vで動作し、形状寸法も自由度が高い(ただし、Siウエハの関係から外形は最大でもφ75mm程度)ことから、α線検出器、β線検出器、γ線検出器、中性子線検出器に応用されている。

シンチレーション検出器
シンチレーション検出器とは
電離放射線を測定する測定器である。
廉価で作ることができる割には計数効率が良いので、広く使用されている。

測定原理
β線、γ線、中性子などの放射線が物質内を通過するときに発光する現象を、シンチレーション(scintillation)といい、発光する物質をシンチレータ(scintillator)という。
この光は、光電子増倍管で電気信号に変えられ、電流パルスとして計測される。
シンチレータと光電子増倍管は隣接した一体構造となっており、シンチレーション検出器という。
シンチレータとしては、無機物ではヨウ化ナトリウム、硫化亜鉛などの結晶または粉末、不活性気体、有機物ではアントラセン、ナフタリンなどの結晶及び液体シンチレータが用いられている。

特徴
シンチレータと呼ばれるセンサーは、電離放射線に照射されたとき蛍光を放つ以下のような物質から作られる。
   無機シンチレーター:透明な結晶(通常は蛍光物質)
   有機シンチレーター:プラスチック(通常アントラセンを含む)、有機物の液体

無機シンチレータ
シンチレーション光に対しほぼ透明な結晶であり、平均の原子番号が大きくなるよう工夫されている。
これは原子番号が大きい程、γ線に対する感度が高い為である。
  NaI(Tl)、CsI(Tl)シンチレータ (NaI(Tl):タリウム活性化ナトリウム)
     ここで括弧内の物質は励起した電子を捕え易くする為に混入される不純物である。
     なお、これらの結晶は程度の差こそ有れ、潮解性を持っており、封入容器が不可欠である。
  ZnS(Ag)  (銀活性化硫化亜鉛)
     α線に感度を有する
     これは白色の粉末状である為、溶剤に溶いて透明基板状に薄く塗布する。

有機シンチレータ
  プラスチックシンチレータ
     何れも無機シンチレータに比べて100倍前後の速い減衰時間を持っている。
     この早い応答を利用してγ線の高速計数、高計数率測定にプラスチックシンチレータが用いられる。
     1mm厚程度のプラスチックシンチレータはβ線測定に多用されている。
  液体シンチレータ
     被測定物を溶かし込んで測定出来る為、α、β核種を60%以上の効率で検出できる。
     他に包含される大量の水素原子を利用して高速中性子を検出する反跳陽子形液体シンチレータがある。

検出される放射線
  NaI(Tl)シンチレータ・・・・・・・・γ線 
  ZnS(Ag)シンチレータ・・・・・・・α線
  プラスチックシンチレータ ・・・・・β線

フィルムバッジ
フィルムバッジとは
放射線を感じやすい特殊フィルムの入ったバッジ型容器。
放射線作業者が身につけ、その感光度から被曝放射線量を測定する。



参考資料
「知っておきたい放射能の基礎知識」 (株 ソフトバンククリエイティブ 2011 斉藤勝裕)
「放射線の影響が分かる本」 (財団法人放射線影響協会)
「核災害に対する放射線防護」 (医療科学社 2005 高田純)
「原発事故緊急対策マニュアル」 (合同出版 2011)

「必修放射線医学」 (南江堂 1999 高橋睦正)
「歯科放射線学」 (医歯薬出版)

「新編教養物理学」 (学術図書出版社 1985 原島鮮 )
「チャート式シリーズ 新物理II」 (数研出版 1978 力武常次)

Wikipedia 「放射線」