重要な語尾表現
米子弁を理解するには、先ずは語尾に付くいくつかの言葉を知る必要があるように思います。
特に、「ごせ」、「・・・けん}は重要であると思います。
・・・ごせ 意味@ 「・・・して下さい」
説明 動詞の語尾に「・・・ごせ」を付けると依頼の意味になります。
例文 「頼むけん止めてごせ」  (訳:御願いですから止めて下さい)
例文 「取ってごせ」 「洗ってごせ」 「揉んでごせ」 「作ってごせ」 などなど
補足 丁寧語では、「ごしない」になります。
   例文:「ちょっとまっとってごしない」  (訳:少し待っていて下さい)
「ごせ」は米子弁を代表的する言い回しで、この使い方は必ず理解しておかなければなりません。
意味A 「呉れ、下さい」
説明 目的格を持つ文の中では、「・・・ごせ」は動詞になり、「下さい(give me)」の意味になります。
例文 ちょっこしだけ、この魚をごしないやい」  (訳:少しだけこの魚を下さい)
・・・けん 意味 「・・・から」
説明 動詞の語尾について「・・・から」の意味をもちます。
例文 「じき行くけん、待っちょてよ」  (訳:すぐに行きますから、待っていて下さい)
例文 「寝るけん」 「休むけん」 「働くけん」  などなど 
・・・いや 意味 「・・・しましょう」
説明 動詞の語尾に「・・・いや」を付けると勧誘、同意を促す意味になります。
例文 「はやこと、行かいや」  (訳:早く行きましょう)
例文 「食べらいや」  「帰らいや」  「書かいや」 「飲まいや」  「しょいや」  などなど  
・・・ない 意味 「・・・した方が良い」  「するべきだ」
説明 動詞の語尾に「・・・ない」を付けると推奨・弱い命令の意味になります。「・・・しなさい」が転訛したものではないかと思われます。否定文ではありませんので注意して下さい。
例文 「そげな事やめない」  (訳:そういうことはやめるべきですよ)
例文 「行きない」 「食べない」 「走りない」 「しない」(訳:した方がいいよ)    などなど 
・・だがん 意味 「・・・です!」
説明 動詞の語尾に「・・・だがん」を付けると、強調命令の意味になります
例文 「そげだがん」  (訳:まさしくその通りです」  「もっとはや、走るだがな」  (訳:もう少し早くはしれ!)
例文 「行くだがん」  「勉強するだがん」 「読むだがん」  などなど 
・・しな 意味 「・・・のすぐ後に」
説明 動詞の語尾に「・・・しな」を付けると、「・・・その直後に」の意味になります
例文 「食べしなに寝−と、牛にな−で」
例文 「行きしな」  「帰りしな」  「寝しな」  などなど
・・・だしこな 意味 「・・・だそうです」
説明 名詞の後に付けて伝聞を意味します。
例文 「わいのおかちゃんは、えにょばだしこなな」  (訳:君の奥さんはきれいな女性だそうですね)
・・・やこ 意味 「‥・し合う」
説明 動詞の語尾に「・・・やこ」を付けると、「‥・し合う」の意味になります。
例文 「ああやちゃ、叩きやこしたげなで」  (訳:あの人達は殴り合いをしたようです)
例文 「褒めやこ」  「殺しやこ」  「抱きやこ」  などなど

代名詞
代名詞の理解も、米子弁をマスターする上では必要不可欠な事です。
さあ、一緒に、「あげ、そげ、こげ、どげ、なんでだだ」、とつぶやきましょう。
あげ 意味 あれ あんな (英:that)
例文 「こなもんやちゃ、あげなことして、どげすーだーか」  (訳:あの人達は、あんなことして、どうするんでしょう)
そげ 意味@ それ そんな (英:it)  
例文 そげな事やめない」  (訳:そういうことはやめるべきですよ)
意味A そう (英:so)
例文 そげしたら、許してごすかや」  (訳:そうしたら許してくれますか)
例文 そげそげ」  (訳:そうだそうだ)
こげ 意味 これ こんな  (英:thisに類似)
例文 「こげなやなことして、えしこになーかや」  (訳:こんな事をして、良い具合になりますか)
どげ 意味 どんな (英:How What)
例文 「おめーやちゃ、どげしただ」  (訳:君たちは一体どうしたんだ?)
なんで
(類語=なして)
意味 何故 (英:Why)
例文 「なんでそげな事をす−だ」  (訳:何故、そんなことをするんですか)
意味 「私」 「自分」
説明 1人称の代名詞 (英:I)
例文 の分だけ取ってはやいぬーだがん」  (訳:自分の分だけ取って、早く帰りなさい)
わい 意味 「あなた」
説明 2人称の代名詞 (英:You)  (注意:「わ」にアクセントがあります)
例文 わいにそげ言っちょっただ−がな」  (訳:君にそのように言っていたでしょう)

動詞
あばかす 意味 「機嫌を取る」 「だます」
あづる 意味 「動く」 「動き回る」
いらくる 意味 「当たる」 「八つ当たりする」
ごねる 意味 「無茶を言う」
せわをやく 意味 「働く」
たばこする 意味 「ちょっと休む」
文例 「ちょっこいがなかい、たばこしょいや」  (訳:少しの間、休みましょう)
まくれる 意味 「ころぶ」
よばれる 意味 「ご馳走になる」

名詞
あこ 意味 「赤ん坊」  (反対語=おせ)
いもっちぇ 意味 「分家」
意味 「良い」  (英:good)      (反対語=いけん)
例文 「それで、がな、いけんだか」  (訳:それで良いでしょう、いけませんか)
おとつい 意味 「おととい」 「1昨日」
おせ 意味 「大人」 
おっさん 意味 「お坊さん」
がんじょ 意味 「勤勉」 「一生懸命」 「頑張り」
例文 「わけ頃あのもんは、がんじょしてがいに世話やいたもんだで」 (訳:若いときあの人は頑張って良く働いたのですよ)
きんか 意味 「剥げ頭」
げだ 意味 「野郎」 「外道」
けんびき 意味 {疲れ」 「疲労」
さかし 意味 「反対」  「逆さま」
さんだ 意味 「準備」 「用意}  (算段の訛ったものだと思われます)
例文 「はやこと、いぬさんだ、すーだがな」  (訳:早く帰る用意をしなさい)
じゃじゃくちゃ 意味 「無茶苦茶」  「滅茶苦茶」
ぜん 意味 「お金」 「銭」
だら 意味 「馬鹿」 「アホ」  (類語=だらず、だらくそ)
たんぺ 意味 「尻」
げっちょ 意味 「最下位」 「末席」 「ビリ」   (類語=げつ)
ごず 意味 はぜ科の魚
こねら 意味 「小さいネズミ」
でこ 意味 「絵」
てご 「手伝い」
てんてこまい 意味 「大忙し」 「非常に忙しい」
にょば 意味 「女」
にょばんこ 意味 「女の子」
ぺったい 意味 メンコ
ぼいやこ 意味 「鬼ごっこ」  
ほがみ 意味 「よそ見」  「脇見」
ぼろくた 意味 「みすぼらしい」
まん 意味 「運」
やち 意味 「達」

形容詞
あばかしこ 意味 「非常にたくさん」
いけん 意味 「良くない」 「駄目」  (英:no good)
例文 「そげしたら、いけんがな」  (訳:そんことをしたら、いけません)
えなげな 意味 「いい加減な」 「怪しい」
えらい 意味 「疲れた」 「苦しい」 「辛い」 
例文 「きんにょから、えらんなって、どげしゃもないだがな」
いたしい 意味 「苦しい」 「辛い」
例文 「そげな話を聞くと、いたしんなーやなわ」  (訳:そんな話を聞くと、苦しくなりそうだわ)
がいな 意味 「大きな」 「広い」 「偉大な」  (英:big large great)
補足 米子弁を代表する言葉で、多くの固有名詞が出来ています。
例文 「がいな祭り」 「がいな太鼓」 「がいな家」 「がいな犬」 などなど
例文 「あーやちゃ、ほんにがいな事したな」  (訳:あいつらは本当に大きな事をしたなあ」
ぎょうさんげな 意味 「おおげさな」
さんだがない 意味 「ひどくてどうしようもない」 「乱雑な」
たいぎい 意味 「おっくうな」 「めんどくさい」
せわない 意味 「心配ない」  (英:no problem)
ぞっきな 意味 「冷たい、冷酷な」
だだくさな 意味 「いい加減な」
だらずけな 意味 「馬鹿らしい」 「無駄な」
はしる 意味 「痛い」
ほんそ 意味 「可愛い」  (類語=ほんちょ)
ほんこ 意味 「真剣」   (反対語=あばこ)
まむない 意味 「マズイ」
まんちゃら 意味 「インチキ」
めんだな 意味 「面倒な」
よけ 意味 「たくさん」

副詞  その他
あばかす 意味 「機嫌を取る」
いっしょくた 意味 「ごちゃ混ぜ」
いなか− 意味 「帰ろうか」
えーたい 意味 「いつも」
えーあんばい 意味 「気持ちいい」
えしこに 意味 「良い具合に 上手く」
おちらと 意味 「落ち着いて」 「ゆっくりと」
しゃった 意味 「しまった」
ぞんぞがつく 意味 「ぞっとする」
だけん 意味 「だから」
だんだん 意味 「有り難う」
ちーとがなかい 意味 「少しの間」
例文 ちーとがなかい、待っとってごしない」  (訳:少しの間、待っていて下さい)
わて 意味 「づつ」
例文 「ひとつわてにするだがん」

慣用表現
えだねか 意味 「良いではないでしょうか」
例文 「ま、あんばいなら、えだねか」  (訳:適当な所で良しとしましょう)
きしゃがわるい 意味 「鬱陶しい」 「不愉快だ」
例文 「ま、きしゃがわりーやつだなー」  (訳:本当に、不愉快なやつだなあ)
しぇ−たもんだがな 意味 「いい加減にしろ」
どげもこげもないがな 意味 「どうしようもない」
どげしゃもねーわ 意味 「どうすることも出来ない」 「手に負えない」
めんだくせ 意味 「面倒くさい」
なんいっちょーだ 意味 「何を言っているんだ」
ばんなりまして 意味 「こんばんわ」

米子でしか通じないと思われる固有名詞
よなご 「旧市内」の事を意味します。
公園 年配の方が公園と言ったら「錦公園」のことを指すことが多いです。
昔は「錦公園」くらいしか公園は無かったのではないでしょうか。
「米子駅」の事を意味します。
せき 美保関の事を意味します
さかえ 境港は正式には「さかい」ですが、みんな「さかえ」と発音します。
かんださん 勝田神社の事を意味します。
ただっさん ただす神社の事を意味します。
大社 出雲大社の事を意味します。
朝日町 朝日町は米子市の飲屋街です。「朝日町に行く」と言えば飲みに行くと同じ意味になることが多いです。
はま 弓ヶ浜地域の事を意味します。
なだ 皆生から境港までの海(日本海)を意味します。

まだまだこの他にもたくさんの米子弁があると思いますが、思い出したら順次ボキャブラリーを増やしていきたいと思います。





 


 米子用語の基礎知識

最近、生粋の米子弁を聞かなくなりました。
私たちが子どもの頃は米子弁が飛び交っていたたものですが、ある意味寂しい事の様に思います。
今でも高齢者の方達が、米子弁丸出しで会話されているのを聞くと、何か温かいものを感じるのですが、皆さんは如何でしょう。
これもテレビ等で標準語を聞くようになったり、交通機関が発達し余所との行き来が盛んになったからでしょうか。
昔、ローマの一地方がローマ全土を支配し、ローマ帝国が出来ました。
そして、その地方(ラティーナ地方)の方言がローマの国語になったと聞きます。
それがラテン語だそうです。
ラテン語は、ローマの衰退と共に死語となって、今では医学書や一部の文献で見る以外、ラテン語が国語として使われている国は在りません。
米子弁がそのような境遇にならないよう、出来れば日本の共通語「米語(よなご)」として通じるくらいに頑張りたいものです。